見えないキャラについて

invisiblecat

ねこラン」に新キャラ「見えない猫」を追加しました。

見えないキャラには次の利点があります。
(1)新たなゲーム性が加わる――――見えない当たり判定が画面の少し先にある状態でプレイすることになります。これにより、「見た目は一人称視点だが、三人称視点のゲームとしてプレイする」という特殊なプレイをすることになります
(2)実装が楽――――グラフィックを非表示にするだけ
(3)実行時の処理の負荷が減る
(4)新しい3Dモデルを作る or 買うコストがかからない

このように利点ばかりかと思ったんですが、実際にプレイしてみると、「変わった経験ができるのはいいが、視覚的な変化が乏しくて退屈な感じがする」という感想を持ちました。
「プレイヤーキャラが見えて、アニメーションしている」ということがゲームのおもしろさに大きく影響するんだな、と改めて感じました(一人称視点でプレイするFPSでもプレイヤーキャラの腕や武器は見えていて、「視覚的な変化が乏しい」という状態にはなりませんね)。

この「視覚的な変化が乏しくて退屈」という問題があるので、見えないキャラはメインにはできないとは思いますが、変化球としては気に入ったので導入してみました。

「音がなる電卓」の解説

音がなる電卓」では効果音を選択できるようにしています。
効果音選択ダイアログでは「電話」「ギター」の音を並べて表示していますが、両者においては背景となる考えが異なっています。
以下にそれぞれ説明します。

電話
「電話」音は、「空間に音を配置する」という考えに基づいています。
スマホの画面という空間に存在する各ボタンに効果音を割り当てており、それぞれのボタンは常に(時間の経過によらず)同じ音を出します。

ギター
一方、「ギター」音は、「時間に音を配置する」という考えに基づいています。
電卓を操作するという行為は、次のような4つの機能を持つ連続した行為の時間的な流れにより構成されています。

(1)1つめの数字を入力(開始)
(2)+-×÷を入力
(3)2つめの数字を入力
(4)=を入力(終止)

このような「異なる機能を持つ要素の時間的な流れ」から構成されるものとしては、音楽におけるコード進行が挙げられます。
コード進行の観点からは、音楽は「トニック・サブドミナント・ドミナントといった各機能を持つコード(和音)の時間的な流れ」として理解されます。

こうしたことから、僕は電卓の操作とコード進行を結びつけてみるとおもしろいんじゃないかと思いました。
そこで、上述の電卓の操作(1)~(4)に対して、次のようにコード進行を割り当ててみました。

(1)1つめの数字を入力 ― D(トニック)
(2)+-×÷を入力 ― G(サブドミナント)
(3)2つめの数字を入力 ― A(ドミナント)
(4)=を入力 ― D(トニック)

キーは、ギターのコードがとても美しく鳴るDメジャーです。
ここにおいては、電卓操作上の機能とコード進行上の機能を一致させることを図りました。
「1つめの数字を入力」する、すなわち電卓操作の始点である(1)に対して、コード進行において始点となることが多いトニックを結びつけています。
また、「(4)=を入力」は、電卓操作において終止の機能を持つ行為であることから、コード進行において終止の機能を持つトニックを結びつけています。

こうしてできたのが「ギター1」の音です。
変化をつけるため、2回めの操作ではコード進行を「Bm G A D」にしています。
そのため、「ギター1」で電卓の操作を続けると、|D G A D|Bm G A D|のコード進行を繰り返し鳴らし続けることになります。

このように、「ギター」の音では、時間の流れに音を配置しているため、同一のボタンの音が時間によって変化します。
すなわち、操作の時間軸上の(1)(3)のどちらにあるかによって、数字ボタンの音がDになったりAになったりします。

『弁証法的行動療法 実践トレーニングブック』

マシュー・マッケイ,ジェフリー・C・ウッド,ジェフリー・ブラントリー(著)、遊佐安一郎,荒井まゆみ(訳) 『弁証法的行動療法 実践トレーニングブック ―自分の感情とよりうまくつきあってゆくために―』、2011年、星和書店

弁証法的行動療法(以下、DBT)のセルフヘルプ本である。
自分の感情に苦しまないようにするスキルを身につけるためのエクササイズが大量に掲載されている。
単なるエクササイズ集ではなく、理論的な説明がしっかりなされている。
文章は極めて分かりやすいもので、ストーリー形式の具体例を混じえた丁寧な説明がなされている。

弁証法的行動療法は境界性パーソナリティ障害向けの心理療法だが、本書を読んでみるとそれに特化しているという印象はあまり受けない。
「自分の感情に苦しまないようにする」ことが一貫して目指されており、その意味で、別に精神疾患にかかってない人にも一般的に通用する内容だと思った。

「弁証法的」の言葉の意味は、「自分の行動を変化させること」と「価値判断せずに自分自身を受け入れること」を両方やっていくということだ。

後者を実現するため、DBTはマインドフルネスを中核に据えている。
本書においてマインドフルネスとは、「自分自身のことや、自分の経験について価値判断したり、比較したり、批判したりせずに、今、このときにおける自分の思考、感情、身体的感覚、および行動をありのままにとらえるための能力」(p.112)だ。
何かについて価値判断をすると、つらい感情が生まれてしまうことがある。
だからDBTでは、価値判断するのをやめて、人も物事も思考も感情もありのままに捉えようとする(これを「徹底的受容」という)。
人は価値判断しまくりながら日常生活を送っているため、価値判断をせずに物事をありのままに受け入れるには、普段と全く異なる頭の使い方をしなければならない。
これはかなり難しいし、だからこそ本書ではたくさんのエクササイズが紹介されている。
例えば、自分が一日に行った価値判断をメモして自覚する練習などがある。

本書はマインドフルネス・スキルの他に、苦悩耐性スキル、感情調節スキル、対人関係スキルの獲得を目指している。
スキルを身につけるためのそれぞれのエクササイズは、ワークシートに書き込むもの、数分かけて頭の中で行うもの、一日を通して取り組むもの、週単位で取り組むものなどいろいろある。
各エクササイズは手間も時間もかかるが、そんなにたいへんな感じはしない。
エクササイズでは普段とは異なる頭の使い方をすることになるので、新鮮味があっておもしろく感じる。
また、理論的背景がしっかりしているので、各エクササイズの意味と相互の関連性を理解しながら進めることができる。

この本の問題は、実際にどういう風にエクササイズを進めていったらいいのかがよく分からないことだ。
各スキルの各エクササイズをどういう順番でどれくらいの回数・期間やっていったら効果的なのか、という指針がない。
最終章にスキルの実践方法が少しだけ書いてあるが、あまりに不十分だ。
仮説レベルで構わないから、こういう風にやってみてはどうかというようなガイドを示してほしかった。

まだエクササイズを始めて3週間だが、この本から得られるものは実に多いと感じる。
たくさん売れるタイプの本ではないが、たいへん良書だと思う。
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