前の記事の譜例にはもう一つ論点がありますのでここで述べます。
今回もギターの編曲法の話です。

1. メロと「メロ以外」を混在させるギター演奏とは

前の記事の譜例は、単音の部分とアルペジオの部分に分かれています。
【譜例】(画像クリックで拡大)
natsuKonzai
緑線で囲った(一部を除いて)単音の部分がメロになっており、アルペジオの部分がバッキングっぽいフレーズになっています。
つまり、一つのギターパートでメロとバッキングを交互に演奏していることになります。
これが「メロと『メロ以外』を混在させるギター演奏」です。
ここにおいて「メロ以外」とは、バッキングや裏メロを指します。

譜例からメロの部分だけを抜き出したものがこの曲の元々のメロです。
元々の状態だと、休符とロングトーンがかなり多い譜面になります。
そのため、そのまま弾くと音の隙間が多くできることになり、少し寂しい感じがしてしまいます。
そこで隙間の部分にアルペジオを挿入して埋めることで、この寂しい感じを無くそうとしたのがこの譜例ということになります。

2. どのような場合に使うべきか

この「メロと『メロ以外』を混在させる」というテクニックはどのような場合に用いられるべきでしょうか。
ここでは次の二つを挙げます

2-1. 音の隙間を埋めたい時

一つ目は、譜例からメロ部分だけ抜き出したもののように音に隙間ができており、それを埋めたい時です。
メロに休符やロングトーンが多く、音に隙間ができた状態だと、退屈な感じ・寂しい感じがすることがあります。
そうした場合に、音の隙間を埋める必要が生じます[注1]。

音の隙間を埋めるという場合、次の三つの方向性があります。
(1)メロを変えて隙間ができないようにする……メロのパートにおける休符やロングトーンを減らす、あるいはビブラートなどを用いて一つの音の中で変化をつける
(2)メロのパート以外のパートで隙間を埋める……別のパートで裏メロを入れたり、ベースラインを動かしたり、ドラムのフィルを入れたりする[注2]
(3)メロのパートに「メロ以外」のフレーズを挿入する……メロのパートにバッキングや裏メロを入れる

このテクニックは(3)の方策をとるものです。

(2)がやりにくい状況としては次のものが挙げられますが、特にこのような場合に(3)は有効なものになります。
・パート数が少なく、他のパートで裏メロを入れることが難しい時
・他のパートで裏メロを入れたりすると、くどいと感じられる時(つまり、音の隙間を埋めたいが、他のパートで裏メロを入れるほどではないというような微妙な状況の時)

2-2. 多彩な演奏にしたい時

二つ目は、多彩な演奏にしたい時です。
音の隙間を埋める必要性とは関係なく、もっと積極的にこのテクニックを使っていくものです。

メロと「メロ以外」が混在した演奏は、一つのパートに複数の要素を含む多彩なものになります。
そこで、多彩さを表現したい時に、メロと「メロ以外」を混在させる形でメロのパートを構築するという手法を用いることができます。

3. どのように使うべきか

このテクニックを用いると、メロと「メロ以外」を同じパートで交互に演奏することになるため、メロと「メロ以外」の区別がつきにくくなります。
そこで、区別を明確にするために、意識的にメロと「メロ以外」のコントラストをつけることが必要になります。

コントラストをつける方法としていろいろなものが考えられます。
例えば次のようなものが挙げられるでしょう。
(1)奏法を分ける……メロは単音にし、「メロ以外」はコードやアルペジオにする
(2)音の動き方を分ける……メロは動きのあるものにし、「メロ以外」は単調なものにする
(3)音域を分ける……メロの音域を高くし、「メロ以外」の音域を低くする
(4)音の長さを分ける……メロの部分を長くし、「メロ以外」の部分を短くする[注3]
(5)音色を分ける……メロではワウペダルを踏み、「メロ以外」では踏まない

譜例で用いているのは(1)(2)です。
譜例では以下のことをしています。
・メロは単音にし、バッキングはアルペジオにする
・バッキングでは同じフレーズを繰り返して単調な演奏にする。それによってメロの動きを際立たせる

[注1]
「ゆったりした感じ」「落ち着いた感じ」「緊張感」などを表現したい場合には、音の隙間はポジティブな効果を生みます。
ここで問題にしているのは、それとは反対に音の隙間がネガティブに作用してしまうような状況です。

[注2]
譜例の原曲(ボーカル版の「夏影」)では、ピアノのアルペジオで音の隙間を埋めています。

[注3]
「音の長さを分ける」という方法を積極的な形で用い、編曲の起点にしてみるとおもしろいものができるかもしれません。
例えば、「1小節におけるメロとバッキングの長さの比率を3:1にする」ということをまず決め、そこからフレーズを考えていくようなやり方です。
これは、「まずメロを作り、その隙間を『メロ以外』で埋める」ことを考えるのではなく、「メロと『メロ以外』の長さの比率をまず決め、そこからフレーズ全体を構築していく」という発想です。