1. はじめに
前回の記事「ある要素をキープし、ある要素を変化させる」の一類型として、「開放弦をキープし、押さえている弦を変化させる」について述べます。
「押さえている弦を変化させる」とは、「(開放弦ではなく)押さえている方の弦については、押さえるフレットを移動させる」という意味です……が、説明しにくいのでとりあえず下に進んでください(;´Д`)

2. 開放弦をキープする理由
「ある要素をキープし、ある要素を変化させる」において問題となるのは、「どの要素をキープし、どの要素を変化させればよいのか」ということです。
ギターの演奏においてキープするのに適した音は何かといえば、それは開放弦の音です。
それは次の二つの点によります。

(1)開放弦は演奏コストが低い(=弾きやすい)です。
特定の音をキープするということは、続けて何度も弾くということです。
続けて何度も弾くことに適した音はどの音かといえば、それは演奏コストが低い(=弾きやすい)音ということになります。
ギターの演奏において演奏コストが低い音は、フレットを押さえずに弾くことができる開放弦の音です。
(2)開放弦の音は音質が良い豊かな音です。
続けて何度も弾く音は音質が良いことが望ましいため、開放弦の音が適しています。

このため、「キープに適している開放弦の音をキープし、開放弦以外の音を変化させる」ことが有効な手法になります。

3. 譜例
この手法を用いた譜例を以下に示しますので弾いてみてください。
僕の「みんながいる」中盤(5:05~)のアルペジオです。

【譜例】(画像クリックで拡大)
KeepKaihou
ここでは一貫して1弦・2弦の開放をキープし、6~3弦で押さえるフレットを移動しています。
これにより、キープと変化の二つの要素を含む演奏になっています。

4. 譜例のポイント
この譜例のポイントを三点挙げます。

(1)3・4小節めでは、3弦の音が2弦の音より高くなっています。
これは、高い音ほど高音弦で弾く一般的なギター演奏から逸脱するものです。
そのため、アルペジオの響きがユニークなものになっています。
「開放弦をキープする」という縛りを入れることによって、このようなユニークな音が生まれています。

(2)3小節め~4小節めの指の動きを見てください。
押さえる指の形はそのままにして2フレット上にずらすだけ、という機械的な動きをしています。
それにもかかわらず、出てくる音は機械的に上昇していく感じになりません。
キープと変化が同時に起こることにより、キープされる開放弦の音とそれ以外の音との関係(音程)が変化していくからです。
例えば、3小節めでは2弦・3弦は半音でぶつかっていますが、4小節めでは全音の音程になっています。

(3)最高音である1弦開放のE音をキープしつつ、ベース音がF#→A→D→Eと上昇していくため、「アルペジオの音域がどんどん狭くなっていく」という一貫した流れができています。
このように、要素を単に変化させるというだけでなく、その変化に一定の流れを持たせることは有効な手法です。